田野畑山地酪農とのコラボセット発売! 〜田野畑山地酪農を学び、塩の道を知る旅〜

肉のふがねは田野畑山地酪農様とコラボレーションセットを数量限定でFUGANEオンラインショップにて発売いたします!
詳細については本記事後半部をご覧ください。

本発売にあわせて、本年6月に岩手大学ライブストック研究会のみなさまと田野畑山地酪農様を訪問した様子を記事にしましたので、合わせてお楽しみください。


広大な山に一年を通して牛を放ち、野草をふんだんに食べさせて、牛乳や牛肉を生産する酪農スタイルを「山地酪農(やまちらくのう)」といいます。岩手県田野畑村にある吉塚牧場は、この山地酪農を実践している数少ない農場の一つです。
2021年6月26日、肉のふがね代表の府金伸治と、山地酪農に関心を持つ学生たちが、吉塚牧場を訪れました。旅の様子をレポートします。
取材・文:橋本佑子(フリーライター)

尽きることのない肉談義

ツアーを企画した岩手大学農学部の照井さん

今回のツアーに参加したのは、岩手大学ライブストック研究会のメンバー8人。岩手大学ライブストック研究会は、家畜を研究するサークルです。肉のふがねのアルバイトスタッフで、共同獣医学科5年の照井周二さんが、府金さんとともにツアーを企画し、後輩のサークルメンバーに呼びかけて実現させました。

岩手川口駅で8人を乗せたバスは、目的地へ。車内では、ツアーに臨む思いや大学で取り組んでいること、自分の興味ある分野など、順番に話していきます。

「山地酪農がどういうものなのか知りたい」
「肥料について研究している」
「産業動物の飼育の改善について考えていきたい」
「現場で学べることは多い。牛に会うのが楽しみ」
意識の高い学生たちの言葉に触発されるように、府金さんも自身が取り組む事業やプロジェクトを紹介します。「岩手短角和牛」と岩手県野田村の特産品「のだ塩」のみで作る世界唯一の熟成生ハム「岩手短角和牛セシーナ」の誕生秘話や今後にかける期待、草だけを食べて育つ「グラスフェッド短角牛」開発への夢、動物の命をいただくことに感謝して、短角牛を鼻から尻尾まで食べ尽くす「Nose to Tailプロジェクト」など、早くも熱い話題が飛び出します。

肉談義で盛り上がるツアー車内

肉談義が繰り広げられる車内で次に始まったのは、部位名クイズ。全国食肉検定委員会認定「お肉博士1級」の照井さんが、「テッポウ」「ザブトン」「トウガラシ」などユニークな部位名を次々と紹介し、それがどこの部分であるかをみんなで推理していきます。クイズをきっかけに話題は「自分の好きな肉の部位」へと続き、「レバー」「「ささみ」「鶏皮」「タン」「豚の頭」など、それぞれ推しの部位を挙げ、府金さんが肉質や味の特徴を補足解説。なかでも「ホルモン」の解説には熱が入ります。「岩手町のホルモン鍋には、豆腐とキャベツがたっぷり入っているのが特徴です。その理由は…」という話から始まり、古くから砂鉄の産地として知られる沿岸の野田村では、鉄鍋と海水で塩作りが行われていたこと、その塩や鉄は、牛の背に乗せられ、「塩の道」を通って沿岸部から内陸部へと運ばれたこと、塩を運ぶ途中、にじみ出る「にがり」を手に入れることができた岩手の県北地方では豆腐作りが盛んになったこと、岩手町はキャベツの一大産地であることなどに触れ、地域の歴史や産業、食文化を映す伝統食であることを説明します。
食にまつわる話で盛り上がり、空腹を覚え始めた頃、最初の目的地「道の駅いわいずみ」に到着。吉塚牧場を訪ねる前に、まずは昼食です。

岩泉のソウルフード「炭鉱ホルモン」を堪能

クセが少なく食べやすい岩泉の炭鉱ホルモン鍋

レストランのテーブルについた一同の前に運ばれてきたのは、バスの中でも話の種となったホルモン鍋。岩手町にホルモン鍋が根付いたように、岩泉町でもホルモン鍋が親しまれてきた歴史があります。町の西部に位置する小川地区では、1840年ごろから石炭の採掘が始まり、1940年代前半の最盛期には1,000人を超える作業員が働いていたそうです。1965年頃、炭鉱近くに開業した食堂でホルモン鍋を提供するようになり、評判となりましたが、1990年代に炭鉱が閉山すると、やがて食堂も閉店してしまいました。懐かしい地元の味を絶やしたくないと、町内の飲食店や精肉店ではそれぞれに工夫し、ホルモン鍋や持ち帰り用ホルモンの提供を行っています。再びご当地グルメとなった「いわいずみ炭鉱ホルモン鍋」を通じて、町を元気にしようと取り組んでいる人たちもいます。
岩泉の炭鉱ホルモン鍋は、豚ホルモンのほか鶏肉、若干硬めの手作り豆腐、キャベツ、長ネギが入り、スープは甘みを抑えた醤油味で、すっきりとした後味です。「ホルモンのクセがなくて食べやすい」「スープの味がやみつきになるかも」と口々に感想を言いながら、箸が止まらない一同。「ホルモンを食べるのは初めて」という人もいましたが、「美味しい」と言って完食していました。岩泉の食を存分に堪能し、いよいよ吉塚牧場を目指します。

 

大地に根ざした畜産とは

吉塚さんのお出迎え

 

道の駅いわいずみから田野畑村の吉塚牧場までは、バスで30分ほどの道のりです。山の中の道を上り下りしながら進んでいくと、一面の草地が視野に入ってきました。
到着したバスを待ち受けてくれたのは、吉塚公雄さんと、妻の登志子さん。バスを降りる学生一人ひとりを、笑顔で迎えてくれました。放牧地を見学する前に、吉塚さんが実践する山地酪農についてお話を伺います。

千葉県出身の吉塚さんは、農業とは無縁のサラリーマン家庭に育ちながらも、中学生の時に「牛飼い」を志しました。小さい頃、親しく交流していた家族が2頭の牛を飼育していて、牛の世話をしながら幸せそうに暮らす一家の様子が印象に残っていたと話します。
「酪農ではなく楽農。牛を飼って、楽しく、豊かな人生を歩みたいと思ったんだよね」
山地酪農と出会ったのは、東京農大在学中の二十歳の時。日本の山地酪農の創始者で、植物社会生態学者の故猶原恭爾(なおはら きょうじ)博士の映画講演会が大学で開催され、その理念と理論に引きつけられた吉塚さんは、猶原博士に直接指導を願い出ました。
「田畑にすることができない傾斜地と、在来野草のニホンシバを主に活用し、化学肥料や農薬、穀物飼料に頼らず、牛乳と牛体を生産する。山地酪農は、日本の酪農を救うと直感しました」
大学卒業後、田野畑村で山地酪農を始めていた大学の4期先輩、熊谷隆幸さんを頼りに移住した吉塚さんは、3年後の1977年に10haの山林を取得し、開拓を始めました。なんと10年間は電気のないランプ生活で、さらには栄養失調にもなったとか。苦労の日々を振り返りつつ、吉塚さんは日本の畜産の現状や、山地酪農の意義を学生たちに説いていきます。

吉塚さんによる田野畑山地酪農の講座
「人間が食べられない草や木の葉を牛が食べて、牛乳という価値の高い食料を生産する。山地酪農は通常の酪農と比較すると1頭あたりの乳量は3分の1ですが、輸入の穀物から作るのではなく、山から作ることを我々は考えているんです」
「SDGsの最先端を行っているのが、山地酪農なんです」
話に耳を傾けながら、吉塚さんが人生をかけて作ってきた牧山と、そこで暮らす牛たちを早く見てみたいと、学生たちの期待が膨らみます。

 

自由な牛たちが幸せに暮らす山

吉塚さんの案内のもと牧場を歩く一行

放牧地を案内する吉塚さんの後をついて、学生たちは牛のいる場所を目指します。急斜面を横切るように、ところどころにできた草の生えていない道は「牛道」といって、牛が歩いてできた道。牛道に沿って一列になって進んでいくと、やがて牛たちの群れが見えてきました。
気を抜くと転がり落ちてしまいそうな斜面に立ち、「バリバリ」と音を立てながら草を食べる牛。そして、草のみで巨体を維持していること、牛たちが急な傾斜を駆け上っても、草が削れたり、土がむき出しになったりしないこと。学生たちは口々に感嘆の声を上げながら、吉塚さんが15年の歳月を費やして作り上げた風景に目を丸くします。

音を立てながら美味しそうに草を食べる牛たち
「うちの山はシバが主です。地面を押さえて流さない能力では、ニホンシバに勝るものがない。密生状態になることによって、1時間に100ミリの雨が降っても流れません。しかも夏草だから、雨の多い時期に活躍してくれます」
18ヘクタールの放牧地で飼育しているのは、約30頭の牛。牛にとって充分な量と質の草を確保するため、放牧地面積1ヘクタールあたり成牛換算1.5頭までと自主的に規定しています。微量要素の宝庫である表土を生かし、ニホンシバを植えて作った牧草地には、春から秋まで50種類以上の野草が自生。牛たちはさまざまな野草をお腹いっぱい食べることができます。喉が乾けば、きれいな湧水を飲むこともできます。「うちの牛は『龍泉洞の水』を飲んでいるようなものだよ」と、吉塚さんは笑っていいます。
自然を活用し、草から牛、牛から牛乳を生み出す循環型酪農を、学生たちは目で見て深く理解した様子でした。

旬の味がある田野畑山地酪農牛乳

 

放牧地から戻ると、吉塚さんは牛乳とヨーグルトを振る舞ってくれました。この日は日差しが強く、坂のきつい山を歩き回り、汗をかいた後に飲む冷たい牛乳は、格別の美味しさです。山地酪農の牛は旬の野草を食べるので、味が季節で変化するのだとか。夏はさらっとしていて青草の香りがし、乾草を食べる冬は濃厚な味に。「何杯でも飲める!」とゴクゴクと牛乳を飲む学生たちを見ながら、吉塚さんも登志子さんもうれしそうです。
田野畑山地酪農牛乳は、田野畑村で山地酪農を実践する吉塚牧場と熊谷牧場が生産する牛乳です。山の開拓には成功したものの、経営が危ぶまれる中、プライベートブランドとして1996年に誕生した田野畑山地酪農牛乳は、危機的状況を救ってくれました。「牛乳屋をやったことで、うちはつぶれないで済んだ。だから、お客様を裏切ってはならない。それを肝に銘じてやってきました」と、安心・安全な商品を届けることへの強い思いを口にします。

濃厚なヨーグルトを食しながら、歴史を真剣に聞く学生たち

牛乳に続いて試食した「やまちヨーグルト」も、生乳の甘みを生かし、酸味を抑えた食べやすい味。じっくり味わいながら、一人ひとり、今日の感想を述べていきます。山地酪農の可能性、観光にも活用できる風景の魅力、野草研究への思い、山地酪農牛乳の美味しさ…。「来てみないと、わからないものですね」との言葉に、「だから、みんなに見てもらってうれしかった」と吉塚さんは満面の笑みを浮かべます。
「山地酪農家を増やしていきたい。田野畑の山地酪農を実現することが、日本の農業、世界の農業を変えると思っています」
山地酪農を語る吉塚さんの話は尽きることがなく、時間はあっという間に過ぎていきます。まだまだ話を聴いていたいところですが、次の目的地に向けて、学生たちは名残惜しそうに牧場を後にしました。

 

伝統の塩づくりにかける誇りと熱意

伝統的な製法でつくられる"のだの塩"

バスは田野畑村から三陸沿岸の野田村へと進みます。時刻は午後4時。それまで晴れていた空の様子が徐々に変わり、白い霧のようなものが立ち込めてきました。開けていたバスの窓から、ひんやりとした空気が入ってきます。三陸地方の夏の風物詩ともいえる「やませ」が、海に近づいていることを知らせます。
海を見下ろす高台にある「のだ塩工房」が、最後の訪問地です。工房内では、職人の皆さんが4日間かけて煮詰めた海水から塩をすくい取る作業をしていました。
野田村の塩づくりは、明治時代に塩が専売制になったことから一旦途絶え、平成に入って復活。しかし、東日本大震災により野田港にあった製塩施設は流失し、震災から1年後、新しい工房が高台に建設されました。以前は燃料に重油を使っていましたが、この工房ではアカマツの薪を窯で燃やしています。伝統の「薪窯直煮製法(まきがまじきにせいほう)」により作られた塩は、絶妙な温度管理により、塩の粒が大きめで、旨みのあるまろやかな口当たり。学生たちも味を確かめ、「のだ塩」が村を代表する特産品として高く評価されていることに納得した様子です。

 

甘みが感じられる"のだの塩"
約1.5トンの海水からできる塩は、約20〜25kgほど。煮詰まっていく海水の状態を見極めながら、減っては足し、減っては足しを繰り返し、乾燥まで5日間を要して作られるのだ塩。誇りと熱意を持って、ただひたすらに塩づくりに励む職人さんたちの姿が、山地酪農の吉塚さんと重なりました。
現地に足を運び、五感を通して多くの学びを得た学生たち。充実した表情を見せながら、ツアーは無事に解散となりました。


田野畑山地酪農様とのコラボ商品が完成いたしました!
記事内でも触れていましたが、田野畑山地酪農は自然に生えた牧草を好きな時に食べ、好きな時に運動して、好きな場所に寝る牛にとってストレスがない環境で生育されている日本では数少ない生産方法を実践しています。
この生産方法で生育されるグラスフェッドビーフは、そのアニマルウェルフェアな側面だけではなく、良質な脂分や豊富に含まれる抗酸化物質が含まれている等、穀物で生産された一般的な牛に比べて栄養価が優れていることが特徴として挙げられます。
輸入飼料に頼らず岩手の自然で自給自足でき、牛にも優しく人の健康にも良いグラスフェッドビーフが、これまで以上に世の中に広がっていくことを信じて、今回のコラボレーションが実現しました。

ぜひ岩手の自然の味がする本商品の購入をご検討いただければ幸いです。
下記の写真をクリックするとオンラインショップへリンクいたします。

田野畑山地酪農の公式ホームページはこちらから

肉のふがねは「New Meat Value – お肉の新しい魅力を岩手から -」をスローガンとして掲げています。今後も県内外の素晴らしい生産者と力を合わせて、岩手の食の魅力を発信していくことを目指していきます。

山地酪農Aセット
山地酪農コンビーフ – 2セット
山地酪農ビーフシチュー – 1セット
画像をクリックすると商品ページに飛びます

山地酪農Aセット

 

山地酪農Bセット
山地酪農コンビーフ – 2セット
山地酪農ローストビーフ – 1セット
山地酪農ビーフシチュー – 1セット
画像をクリックすると商品ページに飛びます

山地酪農Bセット

山地酪農Cセット
山地酪農コンビーフ – 2セット
山地酪農アンドゥイエット 1セット
山地酪農ローストビーフ – 1セット
山地酪農ビーフシチュー – 1セット
画像をクリックすると商品ページに飛びます

山地酪農Cセット

 

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